季節調整

 時系列データは、自然要因による季節に特有の変化と、社会的慣習や制度による季節変化を含んでいる。夏にはエアコンが売れたり、ボーナス時期には売り上げが増えたりすることはよく知られている。これらの季節要因を考慮せずに、前月と比べたり、四半期の前期と比べても、単に季節要因による変化なのか、季節に関係しない不規則変動なのか、あるいは趨勢や循環変動の変化なのか判然としない。これらの季節変化を、元の時系列データから取り除くことを季節調整という。元の時系列データを原系列、季節調整後の時系列データを季節調整済み系列という。
 季節変動は1年を周期とするから、季節変動を除去する最も簡単な方法は、原系列の前年同期と比較することである。すなわち、前年同月比の動きは趨勢的変化を表していると見ることができるが、例えばマイナス幅が縮小し季節調整値では増加になっていても、プラスマイナスを見るので傾向が認識されるのが実際より遅れたり、不規則変動にかく乱されるという欠点がある。
 そこで、高度に統計的な手法を用いて季節要因を除去する方法が考案されている。アメリカ商務省センサス局法(現在はX-12-ARIMA)や、Decompなどいくつかの方法がある。日本では以前は、通商産業省のMITI法や経済企画庁のEPA法が使われていたが、現在はアメリカセンサス局法が広く用いられている。
 センサス局法は移動平均法などを駆使して、高度かつ複雑な処理を行っている。パソコン上で動作するプログラムとして提供されている。中心化12か月移動平均による季節要因の除去や、ある月を数年間移動平均することによる不規則変動の除去など複雑な処理が行われていると考えられる。スペックファイルというプログラムでパラメータを設定できるが、処理内容はブラックボックスである。もっとも現在では、オートマチックに動作するvirsion 0.3 WINDOWS Interface も提供されている。
 処理後の季節調整済み系列は、前月や四半期前期と直接比較することができる。

移動平均

 1月~12月の平均、12月~11月の平均、とずらして平均をとっていくことを移動平均という。
 季節調整の場合、移動平均の中心の月をその月の季節調整値とする。平均する月数が偶数の場合、中心となる月がないので、これを修正して中心となる月を求める方法が中心化12月移動平均法である。

年間補正

 季節調整の結果を適用するには、新しいデータがでる度に毎回季節調整をやり直す方法(同時調整)と、1年間の予測季節指数を出して新しいデータに予測季節指数を適用して季節調整値とする方法がある。
 毎回季節調整をやり直す方法は、その都度過去計数が変わるので過去データは最新の推計値を見なければならない。予測季節指数を用いる方法は、ある時点例えば12月までのデータでその後1年間の変動を予測するので、それを適用する1年間は過去データは安定している。同時調整は、最新の経済動向(季節パターン)を季節調整に反映させることができるという利点から、国際機関(IMF)が推奨しているとともに、多くの主要国において採用されている季節調整法である。島根県では、県民経済計算四半期速報は同時調整を、景気動向指数や鉱工業生産指数は予測方式をとっている。
 年間補正は、毎月公表する統計で、毎月の公表後に判明した報告値の修正など最新年の正しいデータが一年分そろった段階でその年の原指数を再計算し、更にその系列を利用して季節指数を算出し、季節指数を確定する。併せて翌年分の暫定季節指数を算出する処理をいう。

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