名目値と実質値

 名目金利と実質金利という言い方がある。これは、年1%の金利でお金を預けてもその期間に物価が1%上がれば購買力は変わらないので実質金利は0であるというように用いる。この場合、他の何かと比べた相対価格を実質といっている。物価上昇率で割った値ということもできる。経済統計で、このような名目と実質の使い方の例は、毎月勤労統計調査の実質賃金指数などがある。
 これに対して国内総生産(GDP)の場合は、物価上昇分を調整した価格表示には違いないが、少し複雑である。GDPの大きさは、数量が変わらず価格が上昇したとき、拡大したといえるかという問題がある。経済活動の規模等をその時点の価格で金額表示した時価評価が名目値であり、時点間の価格変化の要因を排除し、基準時の価格で評価した数量ベースの評価が実質値である。
 デフレータは名目値と実質値の関係を示すものである。
実質値の公式

 経済規模に対する主たる関心は、時価評価ではなく数量ベースに向けられることが多いので、GDPや経済成長率(GDP成長率)という場合、実質GDPや実質(GDP)成長率を指すことが多い。国民経済計算、県民経済計算では、基準年を固定せず、毎年前年を基準年とする連鎖方式を採用している。

デフレータ

 実質値を求める方法は、名目値を別途求めたデフレータで除して間接的に実質値を求める方法と、実質値を基準時価格で直接評価して求める方法がある。実質GDPは後者の例である。ただし、実質GDPを直接求めるといっても、個別構成項目ごとにデフレータで除してその合計として実質GDPを求め、それを利用して次のように求める。
デフレータの公式

CIGXM は消費、投資、政府支出、輸出、輸入の名目値。
PPc 等は、各項目のデフレータ。
 すなわち、
デフレータの公式

 となっている。
  このように事後的に(implicit)逆算して求められるデフレータをインプリシットデフレータと呼ぶ。
  実質GDPは基準時価格で評価した付加価値であるから、インプリシットGDPデフレータはパーシェ型となる。

  県民経済計算では、生産系列でデフレータを求めている。産出額、中間投入それぞれにデフレータを適用して実質値を算出し、

デフレータの定義

としてデフレータを求めている。インプリシットデフレータである。

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